「あたしが好きだった宮沢さんって、さくらさんと一緒にいる宮沢さんだったんですよね」
美月が急に真面目な顔をして言った。
「正確に言えば、さくらさんを好きだった宮沢さんかな?」
「何、それ」
美月の言葉に、小さく笑う。
「さくらさんを大切に想ってた…。
羨ましかった。あんな風に人を愛せることも、愛されることも…。
宮沢さんみたいに真っ直ぐな人は見た事がなかったから」
美月の言葉に懐かしさを感じる。
あの時、朝日と一緒にいれた時間は短かった。
でもその短い時間の間に色々な事があって、朝日の色々な面を見れた。
付き合う前から、朝日の事をずっと見てきた。
そして、七色グループから去った後も。
朝日にも彼女が出来たり、わたしにも彼氏が出来た。
それだけ時間が経ってしまった。疎遠になってしまった時期もあれば、普通にご飯を食べに行く時もあって
シーズンズにも何度か指名で来てくれたりもした。
あの頃のわたしは幼すぎて、嫉妬や人を信じ切れないところもあって
その愛を手放すことにいつも怯えていた。
朝日にもきっとそういうところがあったと思う。
距離が離れたからこそ、時間をかけたからこそ、見えた物も沢山あった。
あの頃見落としてしまった、沢山の想いの欠片たち。
けれど、あの頃があったからこそ、いまの自分がある。



