【完】さつきあめ〜2nd〜


「あぁ、了解。
じゃあ先に綾乃着けて。

…さくら、涼くんたちが来たみたいだぞ。VIPに案内してる」

「ほんとっ?!おっそいなぁー…
誕生日終わっちゃう」

時計を再び見つめると、23時40分を回っていた。
後、20分で20歳が終わってしまう。

深海はにこりと微笑んで、VIPまで案内してくれる。
文句のひとつでも涼に言ってやろう。
きっと涼はいつものように悪びれる事なく不愛想な顔で、わたしの話を聞き流すだろう。

同い年で、初めて出来た男友達。
沢山の偶然の中で、何度も涼に助けられて、どんな時も何故か自分の中にある弱さや情けなさも涼にならさらすことが出来たの。
不思議な関係だと思っている。涼はいつだって何も言わなくてもわたしの気持ちを理解してくれたし、どんな情けない姿を見せても、いざとなったら必ず助けてくれたんだ。
涼がいなかったら乗り越えられない事が沢山あったような気がする。
だから絶対に口には出さなかったけど、涼の事と同じくらい綾乃も大好きだったけど、ふたりが付き合ってしまった時は何とも言いようのない寂しさがあったよ。
けれどわたしにとって涼も綾乃も同じくらい大切な人だから、ふたりには幸せになってほしい。

VIP前で深海が足を止めて、2回ノックをする。
失礼します、と扉が開けられる。