【完】さつきあめ〜2nd〜


ゆりの言葉に、その卓にいた皆がドっと笑った。
こうやって笑い合える場所を、いつだって求めていた。


ゆりたちが帰って、指名回り。
こうやって指名が沢山被ってるのは嬉しいけど、やっぱりひとりひとりのお客さんとゆっくり向き合う時間の方がずっと好きだった。
それが自分らしい働き方だと、やっぱりわたしはゆりのようにはなれないってどこかで分かっていた。
今日はバースデーだから特別。
わたしはわたしのやり方で、自分の目指すキャバ嬢になる。

その後もレイや由真も駆けつけてくれて
ゆいや凛たちもお店に足を運んでくれた。

紡がれていく縁に、傷つけ合い涙を流した過去があった。
助けられ、支えられた事もあったし、争い合って憎みあった事すらあった。
でもここにある確かな絆に、出会えた事の感謝が止まらない。

でも、どこかで失くした物を探してしまう自分がいて
前までならそんな弱虫な自分が大嫌いだったのだけど、それも自分なんだって思えれば
傷跡さえも愛しく思えるような気がして。

「さくらちゃんおめでとう!!!」

「さくらさん、おめでとうございます!!」

シャンパンタワーに、恥ずかしながら顔写真のついた巨大なケーキが運ばれてくる。
ありがとうを今日何度言ったかは分からない。
ただありがとうを何回も言える幸福に感謝しなくてはいけない。
惜しみなくシャンパンが抜かれて、時刻は23時半を過ぎていた。