「わぁ!すごい花だね!さすがさくらちゃん!」
「あたしなんて…そんな…
でもすごいですね。お花屋さんみたい」
店内に入るといたるところに花束が飾られている。
けれど、たったひとつの花束をまだ探していた。
でも店内のどこを見渡しても、期待していた花束はどこにも無かった。
黒服とキャストが忙しそうに動き回る。
バースデーって何回迎えても慣れない。きっと何年経っても慣れる事はないんだろう。
前日の夜まで不安だった。誰も来てくれなかったらどうしよう、とか。お花が一台も届いてなかったらどうしようって。
小さくたって、見栄やプライドを持って仕事をしている事はそう悪い事じゃない。そう思えて気が楽になってきたのも最近の事だけど。
だってこの見事なお花の数々は、自分がこの1年頑張ってきた証だと思ったら、それさえも愛しく思えてくるのだから。
更衣室でドレスに着替えて、口紅を引き直す。
白い、ロングドレスの裾を持ってホールへ歩き出すと、シーズンズいっぱいによく知った顔が並んでいた。
それを見て、また心が優しくなっていく。
「さくらおはよーう!!
めっちゃくっちゃ忙しいんだけどっ!
あんたのせいっ!」
フロアに出て早々はるなに話を掛けられた。



