「ロマネを、1本」

わたしのしてほしい事なんて、この人の前じゃ言葉にしなくてもお見通して
この人の前じゃかっこつけても仕方がなくて、わたしなんて丸裸の赤子同然だった。

目を閉じて、あの日を思い返していた。
シーズンズで初めてナンバー1になったあの日の事を
覚えているよ。
あの夜も、この夜も、何度も乗り越えてきた中で多かった物は笑顔ばかりなんかじゃなかった事を。
華やかに見える世界の中で、光りはほんの一部分であったという事も
苦しみやしんどさが9割を占めていたとしても、そのたった1割の楽しさの為ならばその辛さも吹き飛んでしまう出来事だった事も

沢山の人々との出会いの中で、わたしはあなたを知って、あなたの人生の一部に触れた。
あなたが愛した人を、わたしも愛した。
さくらさん
だから、もうあなたの返事は聞かなくていい。
あなたが本当は誰を愛していたかなんて、今更知っても意味のない事。
私たちはいつだって戻れない今しか生きれない。
今を生きているわたしにしか出来ない事。

もう嫌だと何度繰り返したとしても、情けなくて惨めでも、進み続ける事しか出来ない人生の中で私たちは生かされている。
どんなに指を刺されて悲しい日が来たとしても、同じ時間を過ごすのであれば、胸を張って笑っている方がずっと自由だ。
どんなに辛くて、この先見たくもない物を目の当たりにしたとしても
素直に好きでいればいい。
あなたを、好きじゃなくなる日まで、愛していればいいだけ。