「だって…今日はゆりさんのバースデーで…
小笠原さんがONEで指名をしているのはゆりさんで…
小笠原さんはわたしたちの勝負に加担しないとはっきりと告げた。
そう考えれば、ゆりさんを指名しにお店に来たって考えるのは自然な事だと思いますけど」
わたしがそう言えば、小笠原はまた可笑しそうに笑った。
「やっぱり君とゆりは正反対だ。
この勝負があるなんてゆりは僕には一切言ってなかったし、それでいて誕生日は必ず来てほしいってハッキリ言ってきたよ。
それなのに君は馬鹿正直にゆりと売り上げで勝負しているから、もしもお店に来てくれるのならどちらかを指名するかは小笠原さんが決めてくださいって言ったね」
「それは…勝負はフェアでありたいと思ったからで
ゆりさんにとってもあたしにとっても小笠原さんは特別な人であるのは間違いないだろうし
けれど、今回の勝負はあたしとゆりさんの勝負であって、お客さんたちには関係のない事です。
あたしたちの仕事はお客さんが来てくれて楽しんでもらう事です。そしてその女の子を選ぶのは、お客さん自身です……」
「さくらちゃんは、出会った時から本当に変わらない。
君はいつもフェアであろうとしてるし、何があっても言い訳もしないし、潔い。
根本的に人を惹きつけるものを持っている人だったね…」
それでもまだ、何故小笠原がゆりではなくわたしを指名してくれたのか分からなかった。



