ゆりのバースデー。
そしてゆりの方が小笠原と重ねてきた時間は長い。

「いらっしゃいませ、小笠原さん」

「あぁ、高橋くんか……。
ONEの店長になったんだってね。こんな風に出会うと何か新鮮だなぁ」

小笠原はいつもと同じ落ち着いた口調でそう言った。
高橋に手を引っ張られるわたしに、ニコッと笑顔を見せて。

「それにしても大きなポスターだね」

そしてすぐに壁に飾られてるゆりのポスターに目を向けて、感心したように言った。

「とってもゆりちゃんの綺麗さが際立っていて、良いポスターだね。
彼女の美しさに、よく黒が似合う」

「小笠原さん!!」

ONEの黒服であったのならば、小笠原の指名がゆりだと思うのは当然だ。
誰かが小笠原が来店したのを告げたのかもしれない。
急いでエントランスに駆け寄ってきたゆりは、ホッとしたような笑みを浮かべて名前を呼んだ。

「やぁ、ゆりちゃん。
お誕生日おめでとう。
いま、ポスターを見て話をしていたところ。今日もとても綺麗だね」

「ありがとございます!!
小笠原さんにそう言ってもらえるなんて嬉しい!!」

どちらにも加担する気はない。
そう言っていたはずの小笠原がここにいる事。
そして、今日がゆりのバースデーである事。
少しの期待も撃ち抜かれるくらい、完璧な状況が揃った。