【完】さつきあめ〜2nd〜


わたしは自分がした選択を後悔していない。
目を閉じ、色々な想いが蘇ってきた。

「さくら………」

高橋の声さえ、どこか遠くから聞こえる。

菫に言われたように、この5分が勝敗を分ける結果になった。
でもやっぱり、あの時自分が取った行動は間違いだとは思えないんだよ。

’良い勝負だった
たとえ負けたとしても、ここまで出来た自分に
協力してくれた皆に、置いてきた過去に再会を出来た事に’

体は疲れとアルコールで変なだるさがある。でもどこかで満足してる自分がいて、ふっと力が抜けていくのを感じていた。
あのゆりを、追いつめるところまで来た。

’それでいいのか?’

どこからか声が聞こえた気がした。
それは懐かしくて、いつも優しかった。
でも振り返ってみても、フロアのどこを見渡しても、その人の姿は見つからない。

’綺麗な女だと思ったけど、思ってた以上にずっと綺麗な女になって、人の心を掴む。
夕陽は………
いつかゆりを超えるだろうな’

どうして、この期に及んで彼の言葉がわたしの脳裏にめぐっていくというのだろうか。
もう一歩も動けない。それでもまだ自分の中にそんな気持ちが残っていたのというのだろうか…?
わたしはさっき一瞬諦めてしまった。もう無理だって自分の限界を決めつけて、勝負を捨てようとした。
でも懐かしい笑顔と声がそれでもまだ戦えと言っている。