【完】さつきあめ〜2nd〜


わたしをゆりに勝たせるために、数本のシャンパンと
お店で1番高いワインが並べられた。
頭で計算をしなくても、もう分かる。
この1本がおりた事によって勝負はもうほぼ確定している。
いや、ゆりの中で桜井が誰を指名するかの時点で勝敗はもう決まっていたのかもしれない。

「桜井さん、ありがとうございます…」

チリンと鈴が鳴るような音がVIPルーム内に響く。
深紅に染まった赤い液体がワイングラスの中で音もなく揺れる。
一口ワインを飲んだ後、桜井は子供みたいな顔をして

「やっぱり芋焼酎の方がうまいや」 そう言って、微笑んだ。 それを見てわたしもまた笑った。

「これからも芋焼酎を一緒に飲んで下さい」

そう言ったら、さっきよりずっと嬉しそうな顔をして微笑んだ。

営業終了30分前。
ぞくぞくとお客さんは帰っていって、それを見送って
店内はさっきまでの盛り上がりが嘘のように静まり返っていった。
桜井とVIPルームで懐かしい話に盛り上がり、時間はあっという間に過ぎ去っていった。

桜井を見送った後、残っている指名のお客さんに少しでも回ろうとしていた時、だった。
頭では計算出来ていても、どこでひっくり返ってもおかしくはない。