ONEに似つかわしくない作業服に身を包んで、それでもどこか自信に満ち溢れている彼の立ち姿に
結局上辺を取り繕うスーツや装飾品なんてその人次第だって強く感じさせる。
作業服で堂々とフロアを歩く彼が、それを証明してくれている。
わたしと過ごす時間を、癒されると言ってくれた。
「桜井さん………」
声を掛けようとした瞬間、ゆりが嬉しそうに座ってる席から立ち上がり、桜井の腕を組み始めた。
足を止めて、思い返していた。
桜井は付き合いで七色グループのお店を利用している。
ONEでは、ゆりを指名してるって言っていた事。
付き合いがなかったこの2年間。あの当時はわたしを特別だと言ってくれていたけれど、もちろん時間が経てば人の気持ちも変わる。
そして、ゆりであるのならば、桜井程のお金になるお客さんを掴まえておかない訳がない。
ゆりへ向ける、桜井の横顔。
笑っていなくても優しい顔なのに、笑ったらもっと優しくなるような人で
笑顔を向けるゆりに、微笑みかけるように何かを話している。
さくらは王子様みたいな人が好きだね。皆に言われていた言葉。そう自分の趣味はいつでも一貫していて、わたしは背が高くて、王子様みたいに優し気な雰囲気の人が好きなのだ。
朝日だけが例外だった。
足を止めたわたしの隣に、高橋が並ぶ。



