【完】さつきあめ〜2nd〜

拘りの強いお客さんの卓で、得意げにワイン論を語るお客さんに笑顔で答えて、話しながら、次にどの卓に回るか考えていた。
そこでちょうど黒服に卓を抜かれた。

頭の中で、いま自分の指名客が何人いるか、どこでどれだけの金額をおろさせれるか計算をしていた。
ふとさっきのゆりの卓を見て見たら、シャンパンタワーを倒されてしまったお客さんは上機嫌そうにゆりと笑いながらお喋りをしていた。
それを見て、安心した。

「さくら!」

「あ、高橋くん!
少しだけ元木さんの席に顔出させてもらっていいかな?
ここ2日間雪菜さんにまかせっきりで、全然お礼も言えてないの…。指名はあたしってことになってるから」

腕時計を見ると、22時を回っていた。時間が過ぎていくのが速すぎる。

「元木さんのところはだいじょうぶ。
いまは雪菜さんと仲の良いキャストたちと盛り上がってるよ。
それより今来るお客さんのところについて欲しいんだけど。VIP予約してあるんだ」

「VIP?!ゆりさんのお客さんは?!」

「ちょうどさっきゆりさんのお客さんが帰ったところで、VIPが空いたなら、雪菜さんがどうしても通したいお客さんがいるって聞かなくて……」

「でもゆりさんのお客さんだって入りたい人沢山いるでしょ?!」

「雪菜さんが元木さんの卓を抜けてわざわざ頼みに来てくれたんだ」

誰だろう。でも気にしてる暇も時間もない。
急いで、2階の階段を駆け下りて、エントランスに差し掛かった時、だった。