指名の多さだけならゆりに負けないわたしは、お客さんの卓についている時間が圧倒的に少ない。
満足しないお客さんを増やすだけ。この勝負が終われば、切れていくお客さんが何人がいるのは予想していた。
それを寂しいと方が間違っている。お客さんはいつか水のように流れて行ってしまう物。それだというのにそんないつ切れてもおかしくない絆を、出来るだけ長く繋ぎとめておきたいと思うわたしの考えはやっぱりおかしいのだろうか。
この2年間で、数えきれない人と出会い、そしてもう会えなくなってしまった人がいた。
仕方がないと思っていたって、お店に通う価値がないと思われたり、他店にお気に入りの嬢が出来たのなら、それはそれで仕方がないと割り切って仕事をしてきた。
わたしたちは、逃げるものを追わない。いや、正確に言えば追えないのだ。
けれど来てくれるお客さんを自分から手放す事はしない。
わたしが自らの手で手放したお客さんはこの2年で何度思い返してもただひとりだけだったのだから。
「ワインですか?」
「うん。僕はワインの方がどっちかっていうと好きでね」
「そうですね!あたしもワインは好きですよ!」
お客さんに合わせるのも仕事。
けれど、シャンパンよりワインの方が苦手だった。
勢いで飲めるシャンパンとワインだったら、シャンパンの方が売り上げを上げるのに手っ取り早いから。
けれどワインをゆっくり飲むのが好きだと言うお客さんも中にはいて



