ONEは元々プロ意識の高いキャストが多い。ナンバーに入っている女の子なら、他店に行けばナンバー1でいる事さえ不思議じゃない。
そのONEの中でゆりと雪菜に続いて売り上げのある彼女ならば、本来中途半端に仕事を投げ出す事はしないだろう。
わたしたちは争いに来てるわけではない。この場所で仕事をしに来ているのだから。きっと話せば分かって貰えると思っていた。
時刻は20時半を回っていた。
指名のお客さんの卓に、とにかく長くついていなければ…。
確かにゆりにとって1番の太客であるお客さんの売り上げがなくなったのならば、とも一瞬考えた。
菫の言う通り、この5分が勝負を左右しようとも
「さくらちゃん~!遅いってばぁ!!」
「ごめんなさい~!ちょっとお手洗い行ってた~!
今日は飲みましょう!」
「さくらちゃんが来てくれて嬉しいからシャンパン空けちゃう!」
「わぁーありがとうございますぅ!!」
なるべく高額なシャンパンやワインの出るお客さんの卓を回る。
これ以上出せない、と渋ってきたら、そこはすぐに切り替える。
ゆりとの差だとか、ゆりの接客なんか気にする時間はない。
シャンパンを一気しては、指名のお客さんを回る。
わたしを指名してくれているお客さんには、かなりの無理を言ってしまっていると思っている。
かなりの頻度でお店に呼んだし、いつもは絶対に頼まないようなボトルをお願いした。



