ドレスの裾を掴んで、一歩前へ踏み出そうとした時、だった。
グイっと肩を強く掴まれた。
「何をしようと言うのよ」
ミエが、ゆりに怒鳴りつけたと思ったら、更衣室へ続く2階の階段へと小走りで消えていった。
「自爆してくれるなら、それで結構。
あたしやあなたには関係のないこと」
わたしの肩を掴む、菫の力が強くなっていく。
高橋とお客さんが何か話していて、ゆりはばつの悪そうな顔をして、そのお客さんは次にゆりに何か言っていた。
「ちょっと、さくらちゃん!!!あなたを待ってるお客さんが何人いると思ってるの?!
ゆりたちが自爆してくれるなら、それはそれでラッキーだと思いなさい!」
「菫さん……ごめんなさい。あたしの指名の卓。5分だけ任せてもいいですか?」
掴まれた肩を振り切って走り出そうとしたら、次は腕を強く引っ張られた。震えるほど、強い力だったと思う。
「さくらちゃん!あなたって本当に分からない人ね!
1分1秒さえ限られた時間の中では惜しいの!」
「でもっ!
あたしたちの仕事はお客さんを楽しませる事だから!それが誰の指名のお客さんでも、あたしたちの仕事は同じ事です!
このままあのお客さんが怒ったまま帰ってしまったら、ONEにもう2度と来てくれなくなるかもしれない!」
「さくらちゃんってば!!」
「菫さん、ごめんなさい…!」



