【完】さつきあめ〜2nd〜



「じゃうちら行きますねっ!!
絶対ゆりさんに負けないですよ!頑張りましょう!!」

そう言って、愛とるながフロアに歩き出した。
その様子を見つめ、高橋と指名が被ってる卓を確認する。
今日自分がどうやって動いて、どう売り上げを上げるか、1分1秒さえ無駄に出来ない時間。
今日のゆりの売り上げをざっと計算してみても、勝負に出てきていると思うほどの数字だった。

昨日、確かに手が届きそうなまでに売り上げは迫っていた。
けれどそんな差をすぐに埋めるように。
他の女の子たちも言っていた通り、ゆりにしては珍しく指名を被らせてきている。もしかしたら今日売り上げを上げてもらえば、次は切れてしまってもいいと思っているのかもしれない。
けれど、それもゆりらしくないところではある。ある意味ペースを乱してしまっている。
そして自分がゆりを焦らすまでのところに来ているのを感じていた。

「さくらちゃん、おはよう」

「菫さん!おはようございますっ!今日もよろしくお願いします」

ぺこりと菫へ頭を下げると、菫は明らかに嫌そうな顔をした。

「やだわー、出勤直後からあんたのその頑張りますって態度ー
やる気が失せるわー」

菫はそうは言っても、何だかんだ仕事はきちんとしてくれるのだ。
彼女がONEに来てから、何度フォローされたかは分からない。
それ以上の経験値がある彼女が、すすんでわたしのヘルプに着いてくれたから、話し上手で、何より綺麗な彼女がヘルプに着いてくれて気分よくしてくれるお客さんは後を絶たない。
だって本当はヘルプに甘んじるキャストなんかじゃない。話し上手で聞き上手であってなおかつ顔も良い。お客さんにボトルをおろさせるように仕向けるほどの話力は、もう経験の差としかいいようがない。
そして菫の仕事には無駄がない。
自分の力を信じているから、彼女の取るひとつひとつの行動に迷いはいつだってなかった。