「雪菜さん……その人って……」
わたしとゆりで指名が被ってる人…。
「さくらちゃん、その人の顔を見ればすぐに分かると思うよ…
んじゃ!とりあえず頑張ろう!ゆりは昨日あなたのペースに飲み込まれて売り上げに差をつけられた。
さくらちゃんだってゆりのペースに飲み込まれなければだいじょうぶだよっ!
あたしは最後まで諦めないってもう決めたんだ!!」
小走りで走り去っていく彼女の背中を見て、ふと小笠原の顔が頭に浮かんだ。
わたしの中の、僅かな希望。
ゆりにとっても、小笠原は特別なお客さんで、目の前でわたしを指名すればペースを乱されるのを分かっていた。
今日は昨日より売り上げが伸びないと分かっていた。
昨日は凛とゆいがいたから。彼女たちは働いているキャスト並みの売り上げを叩きだしていた。
だから昨日の売り上げがゆりより良かったのは、彼女たちの助けもあったお陰だと痛い程分かっていたから。
だからこそ今日という日はますますゆりのペースに飲み込まれてはいけないと思っていた。
「さくらさん今日もがんばりましょ~ねっ!あたし今日は死ぬつもりで飲みまーす!」
「愛……昨日も死ぬほど飲んでたじゃん…」
「愛ちゃん、るなちゃんも本当に今日までありがとうね。
高橋くん、愛ちゃんとるなちゃんは双葉の頃の指名のお客さんのところになるべくつかせてあげてね」
「お前に言われなくたって分かってるってーの!
愛とるなは河野社長の団体の卓な」



