【完】さつきあめ〜2nd〜


綾乃とはるなの卓も回らないと。
同伴で来てくれたという事は早めに回らないといけない。
由真の話を聞きながら、頭の中で計算していた。

「由真から聞いたよ……
さくらちゃん、ゆりちゃんと勝負してるんでしょ?」

「えぇ…まぁ…」

「よぉーし!!ゆりちゃんに負けないように頑張ろうー!!」

何故かお客さんの方がのりのりで、シャンパンやワインを注文してくれた。
黒服とお客さんが話をしている間、由真がわたしに耳打ちしてきた。

「小笠原さんが双葉に来てね…」

さっきVIPルームに由真さんが来ていると聞いて、一緒に小笠原が来てくれているんじゃないかって淡い期待をしてしまった。
小笠原はゆりも指名している。
だからこの勝負の話を正直にしたら、どちらも応援する事は出来ないって言ってた。
そういう人だと思っていた。ONEに来店するという事はどちらかを選ぶという事だ。
もちろんゆりにとって小笠原も特別なお客さんだと思うし、わたしにとっても売り上げを左右するお客さんだ。
小笠原はそれを知っていて、わたしたちのどちらも選べないと言った。

ゆりを指名したらそれはそれでショックだけど
きっと小笠原はどちらかに加担しない人だとは思っていた。
それでも少しだけ期待してしまった。
売り上げだけじゃない。
あの人はいるだけで特別なお客さんだった。