涙が出そうだった。
わたしは卓から抜かれて、それでもまるでONEのキャストにひけを取らないふたりのシャンパン合戦は周りから見ても凄くて
わたしがいない所でも売り上げを上げてくれる。そんなの感謝しかないんだよ。
そして光は、どうしてここまでしてくれるのだろう。わたしの売り上げがあがれば、光は困る事になるはずなのに。
予期せぬ涼たち、そしてゆいや凛の来客。
そして、びっくりするサプライズはまだまだ続く。
何組指名が被っているのかなんて計算している暇はない。けれどいかにボトルを空けるか、どれだけの売り上げを伸ばせるか
シャンパンを片手にお客さんに微笑みかけるゆりだって、計算をしていないとは思えない。
いつだってお客さんの目を見て喋っているゆりが、凛たちの卓に目を向けた。
華やかなキャバ嬢が、しかも他店の。そのふたりがシャンパン合戦を繰り広げているのを、ゆりは目を丸くして見つめていた。
焦り。本当の一瞬だけど、それが見えたように思えた。
今日もゆりの卓ではタワーが空いている。
けれどいくら派手な演出があったとしても、空いているのはただのボトルで、たとえタワーをしなくとも同じ本数のボトルを空ける事は出来る。



