【完】さつきあめ〜2nd〜


「…ゆい」

「さくら、ずっと連絡出来なくてごめんね」

首を横に振る。
いま、目の前にゆいがいる。その事実だけが嬉しかった。
もちろんゆいだけじゃなく、凛も。

「いまね、夜の仕事してるの」

もうゆいは夜の仕事をしないと誰もが思っただろう。
けれどそこにあった才能は確かで、ゆいに拘りがなくともここで辞めてしまってはもったいないと思っていた。
違う場所でも、同じ仕事をしていたら、いつか巡り合えると信じていた。だから今日ゆいがキャバ嬢を続けていると知って、本当に嬉しかった。

「良かった…。ゆいはこの仕事の才能があるから。全然あたしより……」

「そんな事ないよぉ!!
さくらは一緒に働いていた頃からずっとあたしなんかより才能あると思ってたもん。
一生懸命働くなんて超ダサいってあの頃思ってたけど……
いまはそんな風にしか仕事を出来なかった自分の方がダサいって思ってる。
さくらが…あたしを変えてくれたんだ」

「ゆい………」

ゆいが手を引っ張って、わたしを隣に座らせる。
その横に凛の姿があって、凛はふんっと鼻を少し鳴らして笑った。
3人で同じ空間で働いていた頃、何度も辛いと思った。でもいま振り返って見れば、あの日々だって宝物のようだ。