そして、そこまでしてこの勝負に勝ちたい理由があった。
ゆりはこのバースデー3日間で勝負にきている。
最もこのバースデーがなくてもわたしにここまで追いつめられるのは彼女の中では想定外だったのだろう。
だから、いつも見せない表情を見せていた。自分を忘れてしまうくらい、彼女の中にある焦りを感じた。
追いかけるものよりも追いかけられるものの方が何倍も辛い。それは自分が各店でナンバー1を経験してきたから、分かる。
1番以上はないのだから、そこからは自分との戦いになる。
背負っているものなら、ゆりの方がずっと上だったろう。
ゆりのバースデー2日目。
ゆりに倣って、数組同伴を被らせた。
売り上げを上げてくれるお客さんを中心に、いままでにないくらい自分の気持ちだけで動いていた。
無理を、させていたと思う。けれどもっと頼ってよと言ってくれるお客さんも多かった。
出勤してから、今日もタワーが並んでいた。1日目も2日目も気を抜く気はないらしい。
オープンから煌びやかに装飾された店内の中で、ゆりがシャンパンをバンバン空けていく。
指名の本数なら、わたしは負けていない。でもゆりはあえて呼んでる組数を少なくして、自分が卓につける時間を長くし、指名嬢が長くいてくれる卓ならば、お客さんの財布の紐も緩む。
指名客が多かったのが、わたしの救いだ。
そして、ゆりのバースデーであれ、ONEの店内がかなり広めだったこともラッキーな要因のひとつではあった。



