【完】さつきあめ〜2nd〜


「本当に、分かっているの?」

「菫さん…痛……」

「雪菜がしていること、本当はあなたが全部しなくちゃいけない。
あなたはもっと勝負しなくてはいけない。もっともっと、いまのままじゃゆりに絶対敵わない。そんなにゆりは甘くない。
あなたはもっと貪欲に勝ちにいかなくてはならない……」

菫の真剣な眼差しが、突き刺さる。

「あなたは才能があって、ここにいる。誰にも出来ないような事を成し遂げるためにここにいる。
才能のある人間は、責任を持たなくてはいけない………」

「責任……」

「あたしにはまだ…こんな土壇場に来てもあなたは優しすぎるように見える……」

「………」

「勝ちたいのなら、朝日の店を守りたいのなら、雪菜たちへの責任を果たしたいのなら
もっと頑張らなくては駄目。優しい事を言っていては駄目。来てくれた指名のお客さん全てのお金を搾り取ってやろうって気持ちがなくちゃ絶対に駄目」

この期に及んで、まだどうにかなるなんて思っていたのだろう。
自分の中にあるどこまでの甘さに、ゆり程の才能がない事を思い知らされる。
それでも前に進んでいかなくてはいけないのならば、どこかで甘い考えや優しさは捨てろと菫は言っているのだ。

勝ちたいのなら…
朝日の店を守りたいのなら…
雪菜たちへの責任を果たしたいのなら………