「るなちゃん、誰か黒服呼んできて~!
このままだったらこの人ここで寝ちゃうわよ~!」
「はーい!!」
るながふらふらになりながら更衣室から出ていく。
ぱらぱらと更衣室にいたキャバ嬢たちが帰りの用意をしていって
華やかだった今日のゆりのバースデーが嘘のように、更衣室内は異様な空気の中静まり返っていた。
ゆりのお客さんには驚かされるばかり。
その華やかな人脈は会社社長から、芸能人。はたまた何をやっているか分からないけれど、恐ろしいほどお金を持っている人たち。
タワーにシャンパンを注ぐゆりは、その煌びやかな光りよりも、ずっと輝いていた。
沢山の物を犠牲にして、それと引き換えに手に入れたもの。
時に光りは影を落とす。その光りが煌びやかであればあるほど。
そしてゆりはこの仕事をしていくうえで、沢山の物を得た代わりに沢山の物を失ったはずだ。
お店で笑うゆりが美しければ美しい程、それは何故か悲しく見えた。
「雪菜がこんなになるまで頑張っているのは、全部あなたのため…」
「分かってます……」
雪菜の気持ちなど、痛い程分かっていた。
ずっと前向きに励ましてくれた彼女が見せた弱音が、きついなって言う一言がとても重い事を。
菫はわたしの肩を強く掴んだ。痛い程、強く。



