「雪菜ちゃん、ペースを乱されたらあっちの思うつぼじゃない」

「…それは反省してますよ。
でも昔からー!!ゆりって人を焦らすのが上手い奴だからぁー!!」

「だから雪菜ちゃんはゆりちゃんに勝てないのよ」

「そんなの菫さんに言われなくても分かってますよぉ~だ!
それにあたしなんて、はなからゆりに勝とうとは思ってないし!!」

「あぁ…意外だわ、雪菜ちゃんみたいな子でも悔しいとか思う事あるのね」

「自分自身はゆりにはかなわないってずっと昔から認めてますよ……。
でも…きっとさくらちゃんは違う…」

そこまで言いかけて、雪菜の静かな寝息が更衣室に響いていた。
確かに雪菜がここまで感情をあらわにして悔しがるのなんて初めてだ。
朝日はいつか、雪菜は争おうとしないって言っていた。けれどそれは違うんじゃないかな。
キャバ嬢として生きていく中で、1番になりたいのは当たり前だと思うし、ナンバー1に拘りがないのなら、お店にいる理由さえも分からなくなってしまいそうだ。
雪菜はいつだって葛藤してたんじゃないのかな。