【完】さつきあめ〜2nd〜


「そう……
私はお前の思っている通り、自分の私利私欲の為に大切な人を捨てて、欲しかったものを手に入れた男だ。
若い私には野望もあったし、その為に人を利用し、そして捨てた。
けれど数年後、私はそれを後悔した…」

「…後悔?」

小さな頃から、俺はこの父親の顔が見れなかった。
どうしても、見れなかった。

「かすみに似ている、お前を初めて見た時から…」

「俺……」

「俺の後悔が、茉莉花をああさせ、光や綾に悲しい想いをさせてしまった。
かすみによく似ている朝日を見て
私は思ってはいけない事を、思ってしまったから。
今の自分の地位もお金も捨てて、お前とかすみと一緒に暮らす未来を夢に見てしまった。
失って初めて、私が大切にしたかった物に気づいた……。
そして、その後悔はこの歳になっても消える事は1日たりともない…」

母親や俺を捨てたくせに、何を身勝手な事を
何発でも殴ってやりたい気持ちでいっぱいになってたが、そう語る父親の目が赤くなっているのを知って、そんな気も失せた。