「少し朝日に話がある。少しくらいなら、お前も時間があるだろう」

「あぁ…俺もそのつもりで来たし」

「私の部屋にコーヒーをふたつ。
綾、夜はどこか食事にでも行こうか?お母さんにも早く帰るよう連絡しておくよ」

「うん………」

俺は父親の書斎に通された。
小さな頃から父親は家にいれば必ず書斎にこもっていた。
光や綾にも目をくれず。勿論、俺自身にも。そして光や綾の母親にも目を向ける事がなかった。
そう考えればあの人も哀れな人だと思う。
小さな頃から家に寄り付かなかったあの人を、寂しい人だとも思う。
この家には温かな木漏れ日のような陽が灯る時間もなかったのだ。

父親の書斎。
本棚には小難しそうな本が並べられていた。
昔から成績も優秀だった光はよくここで俺にとったら訳の分からない本を借りていって
逆に勉強なんかちっともしなかった俺は、ここに寄り付く事さえもしなかった。
確かに一緒に過ごした時間はあったのだけど、驚く程この人との時間を持てていなかった。
それも今なら分かる。