彼にとって俺は憎むべき存在だと思っていた。そして、そうである事を覚悟で、俺は裏で姑息にこの人を裏切った。兄貴が大切にしている、お店さえも奪おうとしていた。
そしてその過程で大切な人さえも。
だからもう普通の兄弟にも戻れないのは覚悟の上だった。
親父の力さえも利用して、この人を裏切ったのだから。
俺と兄貴が何かを言い合えば、綾は俺たちを交互に見て不安な表情を浮かべる。
小さい時からの癖、ずっと変わってない。
「あぁ。俺が頼むべき事ではないかもしれないけど
もしも七色が継続出来ない状況になれば沢山の人間が職に困る。
だから、そうなってしまったら…光、お前のグループで引き取って欲しいんだ」
そう言って頭を下げる兄貴が俺にした’頼み事’は意外すぎるくらい意外な物だった。
「朝日?!正気?!」
「お前は涼がいるから夜はもういいじゃねぇか。
でも俺は自分が抱える会社の従業員への責任がある。
だから頼む」
「だって朝日にとって七色グループは…
それにさくらは…七色がなくなるなんて思ってない!
だからあんなに頑張ってるんじゃない!」



