住む人が少なくなった屋敷は使用人が減っていて、母親は相変わらず不在のようだ。
自我を自身の子供に向ける事しか出来なかった哀れな女を恨むつもりはない。普通の母親としての愛情をかけられなかったとしても、紛れもなく俺を産んでくれたただひとりの母親だったのだから。
そして父親にも恨み言を言うつもりはなかった。
大人になれば少しは自分の両親が抱える事情を理解出来たからだ。
けれど幼い子供の俺は、あの日見つめた普通の家庭を羨んだままだ。
リビングに行くと、テーブルにコーヒーがふたつ並んでいて
綾と兄貴が向かい合って座っている。
俺に気づいた綾が少し安心した顔をして、向かいに座る兄貴は、目を細め小さく微笑んだ。
守りたい、と思った日があった。けれどそれが100パーセント家族としての純粋な心ではなかった事。
いつだって自分を良く見せたかった事。同情もしてた。俺が兄貴を見つめる目はいつだって対等ではなかった、と。
でもそんな醜い俺の心に、小さかった兄貴はただただ信頼を置いて、単純に俺を好きでいてくれた事。
「おぉっ…しけた面してんなぁ?」
「朝日ってば!」
「朝方まで仕事が立て込んでいたんだ。
あなたの方こそ顔色が悪いですよ。いまにも死にそうだ」
「別に…通常営業だ」
「あたしコーヒーいれてくるっ!」
自我を自身の子供に向ける事しか出来なかった哀れな女を恨むつもりはない。普通の母親としての愛情をかけられなかったとしても、紛れもなく俺を産んでくれたただひとりの母親だったのだから。
そして父親にも恨み言を言うつもりはなかった。
大人になれば少しは自分の両親が抱える事情を理解出来たからだ。
けれど幼い子供の俺は、あの日見つめた普通の家庭を羨んだままだ。
リビングに行くと、テーブルにコーヒーがふたつ並んでいて
綾と兄貴が向かい合って座っている。
俺に気づいた綾が少し安心した顔をして、向かいに座る兄貴は、目を細め小さく微笑んだ。
守りたい、と思った日があった。けれどそれが100パーセント家族としての純粋な心ではなかった事。
いつだって自分を良く見せたかった事。同情もしてた。俺が兄貴を見つめる目はいつだって対等ではなかった、と。
でもそんな醜い俺の心に、小さかった兄貴はただただ信頼を置いて、単純に俺を好きでいてくれた事。
「おぉっ…しけた面してんなぁ?」
「朝日ってば!」
「朝方まで仕事が立て込んでいたんだ。
あなたの方こそ顔色が悪いですよ。いまにも死にそうだ」
「別に…通常営業だ」
「あたしコーヒーいれてくるっ!」



