ベッドサイドに置かれている時計が静かに時間を刻んでいく。
朝日は病院に来る、と言った。
美月の子供の命が助かった事には心から良かったと思えた。でも、いま目の前でふたりの姿を見るとなるとそれは少し話が違う。
もう、小さく芽生えた命に嫉妬なんかしたくなかった。

美月はゆっくりと布団をめくって、上半身をゆっくりと起こした。

「美月ちゃん、無理はしなくていいから!寝てな!」

そう言って立ち上がって美月の顔を見た瞬間、驚いた。
すっぴんの美月は目を真っ赤にして、涙を流していたからだ。

「美月ちゃんだいじょうぶ?!どこか痛いの?!」

「だいじょうぶです…」

「ナースコールする?!ねぇ本当にだいじょうぶ?!」

「だいじょうぶですから!!」

ベッドサイドにあったティッシュペーパーで涙を拭くと、そこにはまだ幼い、子供のような美月の顔が浮かび上がった。
どれだけ人と違う道を歩いてきたとして、どれだけ幼いころから大人の世界に巻き込まれ生きてきたとしても、彼女はまだまだ幼い10代の少女なのだ。
キャバクラにいた時は派手なメイクをして、大人っぽい服装をして、綺麗な宝石を身に着けていた美月とは思えない。
…こんなに子供だったのに、大きな物をひとりで抱えてきたのだと、改めて思う。