「僕も随分振り回されたものだよ。
今月は絶対ナンバー1になりたいからあのボトルいれろ、このボトルじゃいやだの。
そのくせお店に呼んだ日に無断欠勤はするわ、次に会ったら謝りもしないでけろりとしてるときてる」
「心労の多い仕事ですから。若い頃はそんな事もあったような気もしなくもないですね。
あ、お客さんが来ているのでそろそろ失礼しますね。小笠原さんゆっくりしていってください」
由真の話が始まると、ワインを一気に飲み干して、すぐに席を立った。
ぽかんと口を開けたままその話を聞いていたわたしに、小笠原は微笑みかける。
「昔の話をするとすぐに逃げるんだ」
「ていうか、由真さんの話意外でした…。由真さんって仕事に関してはすごく責任感のあるような人に見えたし、ああ見えて真面目だし…」
「うん、そうだね。双葉のママになってからは随分変わったね。
でも昔は何か月もお店を休んだりもしてたよ。物凄く真面目って感じの子ではなかったかな?
むしろさくらちゃんみたいな方が珍しかったりするよ。電話でも何度も謝ってたけど、今日僕に会った時もずっと泣きそうな顔をしてた」
「…いや、本当にごめんなさい…」
「そういう真面目さだって君のいいところだと思っているから、僕は君を指名しているんだと思う」
「でも由真さんの話は意外で…それでもずっと小笠原さんは由真さんを指名し続けてるのがすごいなぁって」
「前にも言ったかもしれないけど、僕は指名を滅多にしないんだ。
その中でも指名をしている女の子っていうのは、やっぱりどこか魅力的なところがあるんだと思うよ。
由真に関しては昔は真面目とは言えなかったけど、ああいう子だろ?
ずっと連絡取ってなくて、ある日突然悪びれもせずに同伴しろって騒いだり、はたから見れば自分勝手に見えるかもしれないけど、僕は由真のああいったあっけらかんとした明るさっていうか無邪気さが昔から全然嫌いじゃなくてね。そもそも嫌いだったらこんな長く指名もしていないわけだし」



