【完】さつきあめ〜2nd〜

意味が分からないまま、自分のお客さんと雪菜の指名客にころころとついて回されて
けれど雪菜のお客さんは優しい人ばかりだった。
どうして指名なんですか？と聞いたら皆こぞって雪菜のお願いだからと言った。
しかもわたしが本指名で、どこの卓でも雪菜は場内指名という扱いになっていた。

本指名と場内では全然扱いが違う。
場内指名のポイントは着くけれど、その席の売り上げは全て本指名の嬢に着く。
だからわたしが本指名ならば、雪菜の卓の売り上げとポイントはほぼ全てわたしへ着く、というわけだ。
それでは雪菜にとって損としかならない。

２２時を回って、大箱だったＯＮＥがかなりの賑わいを見せる。
ＶＩＰは依然埋まったまま、ゆりのお客さんがほぼ貸し切り状態。

ＯＮＥの女の子たちひとりひとりに力があるため店内は賑わっていたが、ゆりは１日に太客ばかりを呼ぶらしい。
多くの指名を回るよりも、少数で売り上げを上げる方が効率がいいし、お客さんの満足度も違う。
時たまＶＩＰからゆりが抜かれる。
フロアを歩く彼女は、誰よりも目立っていて、誰よりも目を引く圧倒的な存在だった。
そして高級なシャンパンが驚くほど簡単に抜かれていく。
黒服が忙しなく高級ボトルを手にもって店内を走り回る。

派閥の予想通りと言ったところかゆり派の女の子たちはヘルプに着いて、ゆりの代わりにボトルをどんどん空けて行く。
その代わり、わたしの卓では双葉から駆けつけてきてくれた愛やるながヘルプに着いてくれて、何人かの元々ＯＮＥの在籍の女の子たちも着いてくれた。
その女の子たちはやっぱり雪菜と仲が良さそうで、彼女がわたしに協力してくれているのは誰が見ても一目瞭然だった。