【完】さつきあめ〜2nd〜


バンっと大きな扉を開く音がして、更衣室の中にあった洗面所が開けられた。
広い更衣室には洗面所もあって、そこから出てきた人を見て、一瞬シンと更衣室が静まり返っていった。

「クソくだらないね」

居心地の良い高音の声が更衣室に響く。
ショートボブの、壊れてしまいそうなくらい華奢で小さな女の子。
けれど彼女がそこに立つだけで、言いようもないオーラを放っていた。
ユウたちの動きが一瞬止まるのを見逃さなかった。

「こんな時間に更衣室にたむろって、新しい女の子いじめってか?
お客さんいないの~?かわいそぉ~…」

可愛らしい声で、毒づく言葉を放つ。

「雪菜さんこそ、暇そうですね~!ゆっくりトイレなんてしちゃって~!」

負けじとユウが彼女の前に立つ。
くりくりとした大きな瞳で、彼女はユウを見上げる。
こんなに柔らかい雰囲気なのに、やっぱりこの世界のトップにいる女の子はどこか気が強くて、動じないタイプが多いようだ。

「同伴で沢山飲んじゃってトイレ行こうとしたらフロアのトイレが空いてなかったもんで~……。
ユウちゃん、ONEでは一応ナンバー3なのにお客さん来てないの?
恥ずかしいねぇ~…。
あなたが言う新しく入って来た双葉のナンバー1さんは何組も指名がかぶってるみたいよぉ?」

彼女の言葉にユウはカッとなったらしく「今からお客さん来るんで!」と大きな怒鳴り声を巻き散らしながら、更衣室から出て行った。

ユウについて何人かの女の子がばつが悪そうに更衣室からぞろぞろと出ていく。