「あたしは……そんなに正しい物ばかり選べない。
そんな綺麗ごとばかり並べられない。
あたしの欲しい物が手に入らなければ、そんなもの壊れてしまって構わない…」
「…それでも、戻ってください…」
無理を言ってるのは自分で分かっている。
今までの自分だったらゆりにこんな事を頼むなんて信じられなかったから。
ちっぽけなプライドを振りかざして、守りたかったのは自分自身だったのだから。
それでも退かないわたしに痺れを切らしたのか、ゆりはビールを一気に飲み込んで乱暴にグラスをテーブルに置いた。
ドンっと言う重い音が静かな店内に響いて、遠くにいたカップルが一瞬こちらを振り返った。
「分からない人ね!
有明さんの新店には行くってずっと話は進んでたの!あなたたちの知らないところで!
オープンに間に合わないから、12月のバースデーはEDENでやる事も決めてる!
下らない話がしたいなら帰るわよ!」
ゆりは立ち上がって、お店を出て行こうとした。それでも縋り付くようにゆりの服の裾を強く握って離さなかった。
「離してよ……」
冷たい視線が注がれる。
けれど決して目を離しはしなかった。



