「光……もういいよ…」

その言葉を口に出すだけで精一杯だった。
光のティシャツが涙で濡れている。顔を上げる勇気をいつまでも持てずにいた。
先に立ち上がったのは、美月だった。

「何か……あたしがいる事で余計混乱させてしまってますよね。
さくらさんも本当にごめんなさい。こんな事、今の宮沢さんに頼るべき事じゃありませんでした。
さくらさんと宮沢さんが付き合ってるのを知ってて家に押し掛けたのはあたしなんです…。だから宮沢さんは何も悪くないんです…。
あたし…帰りますから…。
宮沢さんも迷惑かけてごめんなさい。自分で何とかしますから、この事は忘れてください」

そう言って、美月はその場を立ち去ろうとした。
それを止めたのもまた朝日だった。

「美月待てって!」

そんな姿、見たくなかった。
心配するべきなのは、妊娠している美月。頭では分かっている。
けれど、美月の謝罪を受け入れられなかった。そもそも美月がわたしに謝るのも違うと思うし、この件に関して美月は何も悪くなかった。
誰が悪いって話ではない。ただただ美月の中で新しい命が芽生えている事がたまらなく怖かった。

「後で連絡するから!お前は何も心配しなくていい」

「連絡何ていりません。今日来た事も間違えでした。宮沢さんに責任なんか少しもありませんから、だからあたしの事は気にしないでください」