光と朝日の所へ行ったら朝日はどんな気持ちになるだろう。わたしが裏切ったとか考えてしまうのではないか。
何もなかったと言ってもわたしが光を頼ったのは事実で、それをどう思われるのか。
朝日や光の気持ちなんて本当は考えてなくて、わたしは自分の事だけだったよ。
だからこんなわたしに神様が下した罰だと思ってるよ。
朝日と暮らすマンションに着いて、光は相変わらず軽々とオートロックを解除していく。
何も言えずに光の後をついていく、わたしはどれだけずるい人間だったのだろう。
朝日は果たして家にいるのだろうか、けれど玄関に入ろうとして光は足を止めた。
「光……?」
一瞬下を向いて、すぐに視線はリビングへと続く廊下へと移っていった。
光の名前を呼んだのと同時に、下を向いて目に入った小さな華奢なヒール。
ピンク色のそのヒール。わたしの物ではない女物の靴。それを見た瞬間、嫌な予感がしたんだ。
わたしの手を強く引っ張り、光は遠慮なくリビングへと続く道を歩いていく。
反射的にそれを避けようとしたけれど、握られた腕はいつもよりずっと強かった気がする。
目の前にある現実を目の当たりにしたら、何とか踏ん張って地面についていた足元さえ崩れていきそうになる。
失う事は何かを得ることだと誰かが言っていた。けれど、失った物は失った物で、いくら綺麗ごとを並べても、それ以上に大切な物を手に入れたとはどうしても思えない自分がそこにはいたよ。
辛い経験で得た物なんて考える事もせずに、失った物の数ばかり数えていたあの頃。



