「光の方がよっぽどお兄ちゃんらしいよ」
それをかき消すように付け加えた。
「それでも大切な事を知ってるのは、兄貴の方だと思うけど
結局何かあったら頼りたくなるのも兄貴の方だと思うし」
少し寂しそうに煙草の火をつける光の腕に、朝日とお揃いの腕時計は変わらず光っている。
鞄の中にしまっておいた携帯は警告音のようにずっと鳴り続けている。
バイブにしていても、その主張を崩さないかのようにずっと鞄の奥底で震えている。
「電話に出なくていいの?」
「………」
「なんて、出てほしくないんだけど!
でもさ、大切な物って捕まえておかなきゃ、いきなり自分の手から離れていってしまうものだよ。
俺は夕陽の事が好きだけど、夕陽にそういう後悔だけはしてほしくないよ」
「…後悔?」
顔を上げて、光を見つめる。
光は何も言わずに、柔らかく微笑んでいた。
「後悔……してた」
「え?」
「あんなに光が好きだったのに…
ちょっと光に突き放されたくらいで、どうして簡単に諦めてしまったんだろうって。
他の女が現れたって、どうして自分の方が光を好きだって、戦わずに逃げてしまったんだろうって……
ねぇ、あたし、結局後悔してないって思いながらも、いっつも後悔する道しか選べないんだ……」
「夕陽………」



