「本当に無理するなよ…。俺はお前に七色で働いてほしいなんて望んでないし…
お前が望むなら、お前の生活くらいは保障してやれるんだから」
「やめて。それってなんか飼われてるみたいで自分の足で歩いてないみたい。あたしは誰かの所有物なんかじゃないし…」
ここにいた1ヵ月とちょっとは、まるでリアルな夢を見ている気持ちだった。
それ程わたしは自分自身を失っていたし、自分の足で歩こうとはしていなかった。
子供みたいに欲しい物を欲しいって素直に言えて、目の前にある自分の欲しい物だけを選び取れていたのなら、わたしはこの決断をしていなかっただろう。
朝日は、この期間中、わたしの日常用品を全部家に揃えてくれた。
洋服も、化粧品も、わたしが喜びそうな物だったら全て揃えてくれた。
けれどその全てをこの家に置いていく。置いていかなくちゃいけないんだ。
持ってきたものだけを持って帰る。それでわたしたちの間にあった全ての事を無かった事には出来ないけれど。
もしも…なんて考えても無駄なのは知ってる。それでももしも、と考えずにはいられない。
もしも、時間をかけて、2人の想いを伝えあって、お互いの気持ちを認めた上で抱き合えたのなら、わたしたちはきっと違う関係を築けていた。



