【完】さつきあめ〜2nd〜


「ねぇ美月ちゃんのさ」

家に帰って朝日とふたりでご飯を食べている時、美月の名前を出したら朝日はあからさまに不機嫌そうに顔をしかめた。

「なんだよ、美月がどうしたの?」

「いや…美月ちゃんの家庭環境の事聞いた?」

「あー…何か何となく?あいつが勝手にぺらぺら喋ってたな。
父親が自殺して母親がいないんだっけ?その後親戚の家に引き取られて大変だったって言ってたな」

…何となくって言った割には詳しく知ってるじゃないか。

「でも別に…この仕事してたら家庭環境が良くない奴なんて山のようにいるし、それでも真っ当に生きてる奴だって中にはいるしな。
美月は自分の環境のせいにして甘えてんだろ」

「そりゃそうだけど…
本当に辛かったんだと思うよ。そんな言い方ないじゃない!」

「あぁ?!お前に美月の気持ちが分かるのかよ?」

「…そりゃ分からないけど」

「分からねぇなら、関わろうとするんじゃねぇよ。あいつの事なんて放っておけ」

…でも朝日は、少しは美月の気持ちが分かるんじゃない?そう口に出したかったけど、これ以上喧嘩になるのも嫌なので黙っていた。
ぶすっとした表情で、朝日はご飯を口に運ぶ。
こんな風に言い合いがしたいわけじゃないのに。