そんなただの責任みたいなプロポーズ何にも嬉しくないんだよ。けれど朝日がこんな答えを出すのなんて、わたしの気持ちを何ひとつ知らないからだ。
「結婚なんかしない」
「だよな…。まぁそう言うとは思った…」
「あたしは宮沢さんと結婚なんかしないし、七色グループを守るよ!」
守る、と言った瞬間、驚いたように朝日は目を見開いた。わたしの口から、まさかそんな言葉が出るなんて予想もしていなかったに違いない。
「七色を守るって…」
「あたし、また仕事する…。
由真さんから聞いた。七色グループやばいんでしょ?光のお店にお客さん流れちゃってるんでしょ?
それに、新しい店舗は宮沢さんの夢だったんでしょ?それなら、こんなところで立ち止まってる場合じゃないでしょ」
「何で……」
立ち上がり、朝日の目の前に行くと、朝日は更に戸惑った表情を見せた。
自分からこうやって手をのばすのは初めてだった。
今にも消えてしまいそうな朝日を静かに抱きしめる。
この隙間が、抱き合えば埋めれるものだったらどれだけ良かっただろう。
でもわたしは2人がどれだけの事をしたらこの隙間が埋まるのか知らなかった。
不器用すぎたわたしが出した答えは、朝日にこの想いを告げずに、朝日の守りたかったあのお城を守る事だった。



