何気ない事を言うように、するりと言った言葉に、いつの日かの思い出を蘇らせる。
光もいつか、わたしに結婚しないかって言ってくれた。
それよりもびっくりしたのが、この人の口から、結婚という2文字が出てきた事だった。
独身主義。結婚は誰ともする気がない。色々な人から聞いた。あのゆりさえ朝日との結婚を望んでいた。けれど叶わなかった事。
こんなに夢みたいな話が本当にあるのだろうか。

「今すぐに」

「何言ってるの?」

「俺は、お前に対して責任をとりたい」

その言葉がなければ、真っ直ぐな気持ちを素直に喜べていたかもしれない。

「何、それ。
責任取りたいから結婚したいとか…全然嬉しくないよ…」

「ごめん…。俺はそれ以上のお前への償いが思いつかねぇんだ…。
お前への何不自由ない生活を約束する事とか、お前が住みたい家に住んで、お前が欲しい物を好きなだけ買ってやるしか、俺にはお前への償いの方法が思い浮かばねぇんだよ…」

「宮沢さんは何にも変わってない!」

物やお金なんか欲しかったわけじゃない。
何不自由ない生活を望んでいたわけじゃない。

「まぁ…お前が俺と結婚したいとは思っちゃいねぇだろうけど…
ひとつの選択肢としてそれもあるって事で、頭にいれておいてくれ。
俺はお前にしてあげられる事が本当に分かんねぇんだよ…」