そんな憎まれ口しか叩けないほど、わたしは朝日の前では素直になれなかった。
光に対してはあれほど自分の気持ちを真っ直ぐにぶつけていられたのに、朝日の前では自分の素直な気持ちを何ひとつぶつけられないまま。
自分の中にあった意地とかプライド。
そんなちっぽけな物に縛られていたのなら、わたしだって同じだったのかもしれない。この世界で生きている皆と一緒だったのだ。

「こんなにご飯を美味しく食べたのは久しぶりかもな」

オムライスをぺろりとたいらげた後、朝日はわたしを見つめながら言った。
その瞳にわずかな笑みが漏れている。それを真っ直ぐに見つめられないわたしはひねくれ者になってしまった。

朝日の気持ちは手に取るようにわかる。
この人は嬉しいのだ。この一か月まるで死んだように生きていたわたしが、人間らしい行動を取った事も、一緒に食事を取っている事も、何気ない日常に隠された幸せがどれほどのものだったかも。
それなのに、素直に笑いかけてあげられない。

ただ、笑いかける事さえしてあげられない。

「お前は本当に料理が上手だな」

「こんなの炒めてケチャップで味付けしただけだよ…。
料理なんて言わないよ…。」

わたしなんかより、朝日が今まで付き合ってきた女の人の中で料理が上手だった人は沢山いただろう。
それなのに目の前の朝日はまるで子供のような無邪気な顔をしている。

お皿を片づけた後、ゆっくりと煙草に火をつけてどこか遠くを見つめていた。一体何から話せばいいのだろう。何を伝えるのが正解だったのだろう。