懐かしい匂いに抱きすくめられて、頬に涙が伝っていくのがわかった。
お互いの気持ちは、もう言葉にしなくても十分に伝わっていたから。
朝日の腕の中で、上を向くと、朝日は今までに見た事のないほどに優しい顔をしていた。
両手でわたしの体を抱きしめて、深い深いキスを落としてきた。何度も何度も。

「好きだよ…さくら………」

「あたしも…好きです…」

切ない瞳で、わたしを見つめる。
そして何度も唇を落とす。
この世界に、こんなに人を愛しく思える感情があるなんて、知らなかったの。

「いつかみたいに名前で呼んでよ…」

「あさ…朝日…」

「お前に名前を呼ばれると、生きていていいんだって気持ちになれる…」

ずっとずっと朝日が好きだった。
さーちゃん、許して欲しい。
あなたが愛した朝日を、わたしも愛する事を。
でもきっとこの気持ちを伝えたら、さーちゃんはあの日の雨の日わたしに傘を差しだしてくれたように
優しい顔をするのだろう。