立ち止まって、小さなレイはわたしを真っ直ぐと見上げた。
その言葉に、何も言えなくなってしまう。

「レイも…
光にはやっぱりさくらちゃんが必要だと思う。
ねぇ、ダメなの?」

誰に言われたって、何度言われたって、無理なものは無理で
わたしの気持ちが光に向かってないのに、光と一緒にいるほうがよっぽど失礼ではないのだろうか。
そう言いたいのに、レイの真っ直ぐな瞳が、いまのわたしには痛くて

「レイさん…あたし、宮沢さんが好きなんです」

その言葉に、視線を逸らすように後ろにくるりと振り返って見せて「知ってるよ…」と小さく呟いた。

「美月の件だってそうだし、さくらちゃんって分かりやすすぎるからそんなのとっくに知ってるんだから。
光はさくらちゃんをあんなに想ってるのに…よりによって宮沢さんを好きだなんて残酷だね」

「分かってます…。それでもあたしはやっぱり宮沢さんが好きなんです」

「さくらちゃんの気持ちはさくらちゃんの物だから、レイや誰かがどうこう言う事じゃないって分かってる。
それでもレイもやっぱりあの人と同じ気持ち。
光って誰にでも優しいけど、どっかで自分の中だけじゃあ抱えきれない気持ちを抱いてる人なんだよね。
レイは光の弱いところも分かってるから、だから光がさくらちゃんといれたら、光が幸せになれるんじゃないかなって思っちゃう。
自分勝手だよね、こんな考え」