営業が始まる少し前、愛が駆け寄ってわたしに耳打ちした。

「宮沢さんのところにはいないと思うんで、安心してくださいね~!」

「いや、別に…あたしは」

「え~、宮沢さんとさくらさんの噂ずっと聞いてたんすけどね。
ふたりとも大人だからお似合いって感じっすよ~!
それに美月はしつこくしてたけど、宮沢さんは好きな女がいるからっててんで美月を相手にしてなかったすからね~!」

’好きな女’
わたしの知る朝日は、女好きで、だらしがない。
好きな女なんか、一途に想えるような人間じゃない。
その朝日が言った好きな女。それがわたしだったら良いな。もう気持ちは変わってしまってるかもしれないけれど
それがわたしだったのなら、どれだけ幸せだったのだろう。
夢みたいな話。けれど、ほんの少しだけなら夢を見るくらい許されるよね。
会えない時間で、遠くにいる場所で、せめて想いだけは一緒ならば、どんなに辛い夜だって乗り越えていけそうなんだよ。

「さくらさん、ちょっとヘルプ着けないですかね…」

「へルプ?指名のお客さん何組か被ってるんですけど…」

営業中、困り果てた顔をして沢村が言ってきた。