【完】さつきあめ〜2nd〜

会えなくて。
自分から朝日に会う勇気も、連絡をする勇気もない。
それでもどこかで偶然出会えたなら。そう思って、ZEROに来てる自分の浅ましさ。
誰にも負けていないと思いたいのに、誰にも敵わない悔しさ。
お店を支えてるのはゆりで、会いたいという気持ちを真っ直ぐにぶつけているのも美月で、わたしは自分の足で、何ひとつ行動に移せてないじゃないか。
こうやってただ偶然を待っているわたしに、掴める物なんてある?

マスターの出してくれたお茶が、口いっぱいに苦みと共に広がっていく。

わたしを見つめていたマスターの視線がお店の入り口に向かったのと同時に、扉が開かれた。

「あ…」

マスターがそう呟いたのと同時に入り口を見ると、いま、1番会いたくない人がそこに立っていて
わたしの姿を確認するやいなや嫌な顔をした。
朝日や光の昔からの付き合いならば、彼女だってここに来るって事、どうして考えつきもしなかったんだろう。

どうしてそんなに美しいのだろう。何度見ても惚れ惚れとしてしまう。嫌な顔をしていたって、それだけで絵になるような人で。
大抵のキャバ嬢は宣材写真の方が綺麗だ。でも彼女は違う。
宣材写真で美しい以上に、動いていたり実際見る姿の方が美しいのだ。
明らかに嫌な顔をしてもいつだって口角が上がっていて、大きく開かれた瞳はきらきらとしている。
どんな時にだって髪に艶があって、無駄なお肉が一切ない。頭の上から、足の先まで美しいという言葉が似合ってしまう人。