まだお店はオープンしたばかり、美月のお客さんはオープンから来る人が多かった。
実際今日は何組か指名のお客さんが来る予定ではあるけれど、いま現在指名のお客さんがいないのも事実だ。


「なに、あれ」

「調子のってるよね」

待機にいた女の子たちが何人か口々にそう言った。

「めっちゃさくらちゃんにライバル心丸出し、マジでかわいそう~!」

「いやいや、仕方がないですよ」

「内心すっごく焦ってるんだよ!何人かお客さん切れちゃってるしね~!
お客さんに借金させて通わせてるんだから、いつまでも続かないんだからね!」

はは、と愛想笑いをして、佐竹のテーブルへ向かう。

「さくらさんです」

「さくらです。お席にお邪魔するのは初めてですね。
よろしくお願いします」

佐竹は「あぁ…」と小さく呟いて、その視線はすぐに別のテーブルに着く美月を追っていた。

誰かのヘルプに着くのなんか久しぶりだな、そう思いながら丸椅子に座り、空になった佐竹のグラスに氷をいれる。

生気のない顔。
お世辞にも容姿が良いとは言えない。気が弱くて、おどおどしているのが印象的な人だった。
けれど、美月を見つめる瞳はいつだって真っ直ぐだった。