それは本心だった。
わたしはわたしで、他人は他人。流されまいといつも必死だった。
この仕事をしていく上で、自分というものをしっかりと持っていないと、ただただ流されて堕ちていくだけなのだから。
それに周りは美月のやり方は続かない、と声を揃えて言っている。それにはわたしも同意。
嬢とお客さんは儚い関係だといつも思う。けれど、この世界は義理や人情だって、他のどの世界より強いものであると。結局は心がないといつかお客さんは離れていくものだから。
背を向けていた美月が立ち上がり、わたしの前へやってくる。
猫みたいな瞳。近くで見ると、ずっと綺麗な女の子だったんだ。人より美しく生まれるということは時に傲慢になってしまうのだろうか。
「さくらさんて宮沢さんの何なんですか?」
「何なんって…、あたしたちは別に…。
従業員と経営者ってだけだけど…」
「あたし宮沢さんが好きなんです」
好きだ、とはっきり言い切った美月にさっきまでの余裕は何故か見当たらなかった。
それどころか、少し怯えているようにも見える。
「あたしには関係ない」
「でしょうね。宮沢さんあたしの事期待してるって言ってくれてるし
一緒にご飯行く約束もしてるし
宮沢さん今彼女いないんですよね?あたし自分が狙った男落とせなかった事ないですから!」



