大きな声で、笑いながら更衣室に入ってきた美月と愛。
わたしの存在に気づくと「やべ」と小さな声を出して愛は気まずそうに舌を出したが、美月は何も感じてない様子でわたしを見て鼻でふふんと笑って気分が良さそうだった。

別に人に誇れる職業ではないと思ってる。
どんなやり方をしたって、お客さんが指名をして、わたしたちはそこから給料をもらってる。
それも普通の人に比べれば幾分か多く。
お金に汚いも綺麗もない。
けれど、わたしはお客さんの不幸を願ってなんかいない。一緒にいる時間は楽しく過ごしたいし、支払うお金の分まで日頃の疲れを癒しにきてほしいと思っている。
だから元々美月とわたしとでは考え方が違うのだ。

「さくらさ~ん!お疲れっす!」

わたしの顔を見ないままへらへらと笑って愛はロッカーに手を伸ばして、美月は更衣室にある椅子に座って「ふぁ~」と大きなあくびをした。

別に先輩風を吹かせて、美月に何かを言うつもりもない。そんな出来た人間でもない。
それでもそれなりに仕事にはプライドを持っていたいと思う。

「何ですか?何か文句あるんですか?ナンバー1はいまわたしですよ」

わたしに背を向けたまま、美月が言った。ロッカーから着替えを取り出した愛は明らかにおろおろとし始めて、「止めなよ、美月」と美月を宥める。

「別に…
美月ちゃんがどんなやり方をしようとあたしには関係ないから…」