「あの噂本当だったんだね」
「噂?」
「ん~…。
美月が会長の事好きだって噂。
愛とかるなが楽しそうに話してたよ~…。
なんか美月、会長のためにナンバー1になるんだって!ナンバー1になったらご飯に連れて行ってくれるって約束してるんだ~って。美月ってああいうのがタイプっていうのが意外だけどね…。うちの系列じゃあ、会長は怖いってイメージしかないから誰も近づかないけどね。
美月が愛やるなを連れて会長のよく行ってるバーに顔出したりしてるみたいよ」
朝日のよく行っているバー。そんなものわたしは知らない。
昔は毎日のようにトリガーに来てくれて、トリガーに行けばいつだって朝日に会う事は出来た。
けれど、あの日々があった日から、朝日はトリガーに顔を出さなくなった。涼に聞いてみても朝日は一切トリガーに顔を出さなくなったらしい。
単純にわたしに会いたくないだけだと思う。
自分から手を離しておいて、どれだけ自分勝手だと人は言うだろう。
それでもわたしの知らないところで朝日と美月が会っていて、一緒に食事をしたり飲んだりしている。その事実に傷ついている自分がいた。
それでもわたしはもう、朝日と触れ合えない。
触れ合えないどころか、普通に話をしたり、連絡を取ったりも出来ない。
抱き合う前の関係にも、わたしたちはもう戻れない。
由真と話し終えた朝日は、真っ直ぐに入り口に向かって進んでいくんだと思っていた。
わたしに目も合わせようとしない。双葉でナンバーが入れ替わって、七色を守るためにグループに戻ったわたしを馬鹿みたいだと思うのだろうか。たった数ヵ月で破られてしまうナンバー1にはもう期待してくれない。そして新しい女の子が入って来て、それが自分の好みならばまた恋をするというのだろうか。
けれどもゆっくりと朝日はわたしたちが待機しているソファーへと近づいてきた。



