けれどわたしがダメージを受けていたのは、そんな類の書きこみではなかった。
「さくらって、ここの元社長の女だったんだよ」
「いや、それは違う。オーナーの女らしいから、我儘言って、系列の色々な店を変えたりしてるみたい」
「さくらはここのオーナーと同棲してるよ」
「違うって、最初は元社長と付き合ってたんだけど、金持ってるオーナーに乗り換えたんだよ。どっちにしても金の亡者」
背筋がぞわっとした。
こんなプライベートな事を知っているなんて、外部の人間じゃないと思った。
内部の、わたしを良く思わない人が書き込みをしているとしか思えなかったのだ。
もちろん事実だけじゃない。わたしや光、朝日の関係を何となく知ってはいるけれど、本当の真実は知らない誰かの、わたしを良くは思わない人物の書き込みだとしか思えなかった。
見なければいい。レイはそう言った。
でも光や朝日の名前も出てしまっているから、気になって仕方がなかった。
見れば心が病んで、ストレスになるのはわかっていたのに。何人かのお客さんがわざわざサイトに書かれている事をわたしに知らせてくれるのも、ストレスになっていた。
「はぁ~……」
思わず大きなため息。
レイはずっと慰めてくれて、一緒に待機の所へ向かうと、また心を痛めるような光景が目の前に広がっていた。
「おいっ!離せって!」
ずっと聞いていなかった声が、双葉のホールに響いていた。
足が止まり、その場から動けなくなったわたしに、レイは不思議そうな顔をして、振り返った。



