【完】さつきあめ〜2nd〜

まさかとは思った。
ありえない、とも。でも心のどこかでそうなるかもしれないと予感していた。
6月を終えて、売り上げ表を見て、愕然としていた。
美月は入って3ヵ月。未経験で、たった3ヵ月。双葉では、その日どよめきが起こっていた。

7月に入って、全店舗の売り上げ表が出て、もちろんゆりはONEでもグループ内でも圧倒的なナンバー1。
皆を驚かせたのはそんな事じゃない。

全店舗の売上表のナンバー2に、双葉の美月と記載されてあった。
6月末まではわたしがナンバー1だった。美月とも大きな差をつけていたと思う。でも6月の締め日で1位と2位の差が入れ替わってしまった。
締め日だけで…。
その事実に落ち込まざるえなかった。

手を抜いたわけじゃなかった。精いっぱいやっていたように思える。でも心のどこかで、まさか新人に抜かされるなんて思ってもいなかった。自分の甘さがそこにはあった。

「こんなの一発屋だよ。
美月ちゃん、あの太客にばっかり金使わせてるから
切れたらあっという間に落ちるよ」

美月の事をよく思っていない双葉のキャストはわたしにそう言った。
確かに彼女の言う事は最もだった。佐竹というあのお客さんが美月の売り上げを支えていた。彼を失ってしまえば、あっという間に転落する一時的なものだったかもしれない。それでもわたしは美月に負けた。これがたったひと月の話だったとしても負けた事実は変えられない。
入って3ヵ月の新人に負けた。その事実が大きなストレスになっていった。